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記: 「違い」を認めるというのは意識するだけでできるようになるんですか? 石川さん: 難しいです。自分と相手のことをしっかり客観視できないといけませんから。 記: どうすればできるようになりますか? 石川さん: 頭の中に映画のスクリーンを思い浮かべるんです。そして相手の話している内容をできるだけ頭の中で映像化します。そしてできれば、そこに色を付けたり、香りを付けたり、音をつけり、感触をつけるなど、五感をフルに使うようにするんです。そうすると相手の話に共感できるようになって、しっかり相手の話を聞けるようになります。 記: そのようなことも研修でやっていくんですか? 石川さん: そうです。例えば、3人組でエクササイズをやることもあります。1人目が上司役で2人目が部下役、そして3人目が2人のやりとりをじーっと見て・聞いている役。そして、見て・聞いている役の人が上司役のコミュニケーションの取り方がどうだったかを評価するんです。 記: 見て・聞いているだけでコミュニケーションの取り方がどうだったかわかるんですか? 石川さん: はい、わかります。自分ではきちんとやっているつもりでも、第三者から見ると話をきちんと受け止めているかどうかわかるんですね。特にその人にとって当たり前なことの話を聞いているとき、相手を認められていないというのがわかります。例えば、部下役の人が「これぐらいの営業成績を出しました」と報告をしているとき、上司役の人が「それぐらいの成績当たり前だろ」と思いながら聞いていると、なかなか部下役の人のことを認められません。しかも、だいたいそういう思いは相手に伝わります。面白いもので、コミュニケーションというのは、否定的な感情は言葉に出さなくても相手に伝わるんです。ところが肯定的な感情というのは言葉に出さないとなかなか伝わりません。 だから相手との「違い」を認めるというのは難しいんです。意識して訓練していかないと、なかなかできるようにはなりません。 記: コミュニケーションって難しいんですね。でもどんな人とでも円滑なコミュニケーションが取れるようになれば、どんな職場でも働ける気がします。
石川さん: そうですね。ただ、1つ勘違いしないでほしいのは、コーチングを身につけたとしても、すべてがうまくいくわけじゃありません。みなさん就職して部下を持つようになったら、コーチングだけではやっていけません。指示・命令しなければいけない時期、とにかく教え込まないといけない時期もあります。 記: コーチングか指示・命令かなどの使い分けもしていくんですか? 石川さん: はい、していきます。私はどのように使い分けていけばよいかということも研修で教えていきます。 記: いつでも相手に聞いていればいいというわけではないんですね。 石川さん: だめです、当たり前です。よく言う冗談なんですけど、消防士の人たちが火事の現場に行ったとき、上司が部下の消防士に対して、「君はどこから水をかけたらいいと思う」とは聞きませんよね(笑)。そこはもう指示です。命令です。「考えるな、行け」って。つまり、コーチングがいいときとよくないときがあるんです。 ただコーチングの中でも、こういう使い方もあります。例えば、本来力を持っているのにやろうとしない人がいたとき、ついイライラして「向上心を持ってもっと勉強しろ!」などと叱責して気づかせたくなりますが、「今の君の商品知識で、後何年うちの会社に勤めていけると思う?」と問題提起をするような問いかけをするんです。これもコーチングの1つなんです。ですがみなさんそういうのは考えてない。 記: そのような聞き方ができるようになるには、研修で学ぶだけではなくて、現場、現場で自分に合ったやり方を築いていかないといけないんじゃないですか? 石川さん: そうですね。ただ大事なのは聞き方というよりも、相手に対する期待感や可能性を信じる気持ちです。これを私は『コーチング・マインド』と呼んでいます。これがないと、どんな問いかけをしても相手の心には響きません。だから先ほどの「今の君の商品知識で、後何年うちの会社に勤めていけると思う?」といった問いかけも、「君はもっとできるはずだ」と期待感を持って言わなければ相手に伝わりません。期待感を感じてもらえれば、「僕がやってないんだと思う」といった返事が返ってきます。そこからコーチングに入っていきます。「君がそういう風に動けない原因はどこにあるのか、ちょっと聞かせてくれないか」と問いかけます。すると、しばらく沈黙が続きます。この沈黙を待てるかどうかが難しいところですが重要なんです。だから、どんな聞き方をするにしても、相手に対する期待感、『コーチング・マインド』がないと、いいコーチングはできないんです。 記: では、どんな場合においても、例え相手を叱るような場合においても『コーチング・マインド』がないとうまくいかないということですね。 石川さん: そうです。だから1番いけないのは、言葉だけ荒げて自分の感情をぶつける上司です。何の解決にもなりません。 |