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3.理念を共有するということ。

 

取材の様子

記: 学校経営は特別だと思うことはありますか。

漆さん: 企業でも学校でも人の組織であるということは同じだと思います。

記: それは組織として人を管理する部分のことでしょうか。

漆さん: 人間関係の問題など、人の集まる組織のかかえる問題は似ていると思います。そして、それぞれの組織に集まってくる人のタイプに、多少違いがあると感じますね。理念や待遇などいろいろな条件によって、集まる人が違ってくるのかもしれません。

例えば学校には、高収入を望んでいるとか、立身出世したいという人はおそらく最初から来ないと思います。一方、そういう人が集まる組織もあるでしょう。人それぞれ、やる気のもと、モチベーターと言うのですが、それはみんな違うと思いますね。

記: それは人の価値観の違いでしょうか。

漆さん: そうですね。やる気のもとや、なにを大事にするかがみんな違うから、それぞれの組織の性質も違ってくるのだと思います。

記: では、組織運営のポイントはありますか。

漆さん: 学校は、「生徒のために」という同じ価値観を皆が持っているところがいい職場なのですが、「生徒のために」の方法論が違うことがあります。

例えば、模試の前に「模試の過去問をやらせたほうが、勉強のきっかけになっていいのでないか」と言う人もいれば、「模試はデータが大事だから過去問はやらせないほうがいいのではないか」と言う人もいるというように。どちらも「生徒のため」で価値観が同じですが、行動が違っています。そうするとぶつかりますよね。でもそれは仕方のないことだと思います。そのようなときは常に「では、目標は何だったか」というところに立ち戻って、みんなで意見を言い合っていけばいいと思いますね。

それに、どの組織でも必ず、温度差はあると思います。そして個人のモチベーションにも波があると思います。実際に、私自身、どうしてもやる気がでない時もあります。一人ひとりのやる気に折々、多少の強弱があったとしても、それはそれでいいのではないでしょうか。それを補い合えるのが個人でなく組織で仕事をすることの良さではないかと、思います。

記: 教員を採用するときに気をつけている点はありますか。

漆さん: 採用時に気をつけているところは、採用後のトレーニングや研修では、身につかない部分です。つまり、何のために教員になろうとしているのかという、その人の心や志です。どれほど不器用でも心があれば成長するのでいいと思います。教員も長い目で見るようにしていますね。

記: 1年間企業研修を経て、社会と触れ合ってから配属という形にしていると聞きましたが。

漆さん: そうしていたときもありましたが、ある程度OJT(注1)ができるようになってきたので、今はしていないですね。企業研修で社会を学ぶことも大切ですが、企業にはその企業の理念があり、私たちの学校には私たちの学校の理念があります。それを始めに身につけることも大切なことだと思います。

記: 理念の違いによる問題ですか。それでは以前の外部研修の目的は何でしょうか。

漆さん: 一般社会を実地に体験することです。私自身もそうですが、学生からすぐ教員になってしまうと、一般社会を見ないまま、将来社会に出る生徒を教えることになってしまうので。しかし、今の本校は、社会とのつながりが濃いので校内にいてもかなりの経験ができるようになりました。

記: 進めた改革を戻すことは難しく思いますが、1つ1つの意味を振り返り修正しながら進めているのですね。では、新入生を迎えるにあたって気をつけている点は何でしょうか。

漆さん: 情報をオープンにすることです。学校説明会を頻繁に開いたり、取材に答えたり、ブログに日々の学校の様子を細かく書いたりしています。こういうことに力をいれているのは、学校をよく知った上で「この学校は合う」と判断した人に入ってきてもらいたいからです。

 6年間通う学校です。合う学校を選べれば毎日が充実して楽しい学校生活をおくれるでしょうし、合わないと感じてしまうと子供は辛いと思います。

私立学校の校風は千差万別、いろいろな価値観があります。入学してみると、そこには、偏差値や進学実績など外から見た数字に表われない様々な要素があります。子供の幸せのためそれをしっかり伝えておきたいのです。

記: わたしは中学受験だと親主体になりがちだと思うのですが、どう思いますか。

漆さん: 本校では子供の判断力を大事にしていますね。親御さんが決めて、入学後、自我の芽生える年齢になって「こんなはずじゃなかった!」と子供がなってしまったらかわいそうです。本校は「必ずご本人を一度、多くの生徒とふれあえるオープンキャンパスや文化祭に連れてきてください。そして、最後は自分で決めさせてあげてください」と言っています。

記: 自分が決めて入ると、そのあとのモチベーションが違うということですか。

漆さん: そうですね、モチベーションは全く違ってくると思います。自分が決めたという意識のある子は入学後も伸びます。思い通りにならないことはどこに行ってもあります。そんな時、自分で選んだという気持ちがあれば、人のせいにすることなく、どう乗り越えるかを考えることができるのです。小学6年生にも入りたい学校を選ぶ判断力はあると思いますよ。

(注1)OJT(On the Job Training)…職場内訓練。従業員の職業訓練で、仕事の現場で実務に携わりながら業務に必要な知識・技術を習得させるもの。

 
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