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現在の品川女子学院には「28project」とよばれる特有のプロジェクトがあります。このプロジェクトは、「28才になったときに、社会で活躍する女性を育てる」ことを目指しています。「18歳の大学進学の先に、将来の目標を立て、未来から逆算し、その土台をいま作っていく」それが「28project」なのです。 具体的には、社会とのつながりに気づくため地域ボランティアをしたり、日本文化に触れるために「茶道・華道・着付け」を習ったり、仕事を意識するために企業とのコラボレーションをしたり、国際感覚を身につけるために海外研修や留学生との交流をしたりしています。 28projectに込められた漆さんの気持ちに迫りました。
記: 「28project」では、なぜ28才なのでしょうか。 漆さん: 28才は、学んだことを社会に還元できるようになる年齢でもあり、出産年齢にリミットがある女性にとっては、人生のワーク・ライフバランスを考える時期でもあります。このときに一生涯を視野に、しっかりとした足取りで未来に向かう人に育っていてほしいのです。 記: 最近、28才になった卒業生のホームカミングデーを開催したとお聞きしましたが、卒業生は、理想とした28才に育っていましたか。 漆さん: 願ったような結果になっています。それだけでなく、イメージしていた以上の結果まで出てきていますね。 記: それはなぜでしょうか。 漆さん: もともと、28才の理想像を、世の中で活躍している女性を見て考えてきました。そして、そのような方に「中高生のときしておいた方がいいことはありますか」と聞き続けてきました。 すると例えば、その人が世界で活躍している人であれば、「英語の前にまずは日本の文化を学ばせてあげてください」とアドバイスしてくれます。普遍的な学校教育に加え、そのような社会の生の情報も参考にし、学校としてやるべきことを決め、実行し続けています。未来から逆算することでイメージ通りの結果になっているのでしょう。 記: 具体的にどのような卒業生がいらっしゃいますか。 漆さん: 先日、21才で公認会計士に受かったという子が遊びに来ましたよ。この卒業生のように28才よりも少し早めに夢を実現しているような子もいますね。また、「救急救命士になりたくて薬学部に進学し、資格をとって消防庁に入りました。放水訓練もやるんですよ」と、大学卒業時にストレートに自分の夢を実現している子もいる一方、「大学は希望のところに入れなかったけど、それがバネになって東大医学部の大学院に合格しました」と手紙をくれた子もいます。 記: 早めに夢に近づけたのは、早い時期にゴールを設定したからでしょうか。 漆さん: わたしはゴールの設定は早いほうがいいと思いますね。Never Too Late=いつまでも遅いことはない、という面もあるでしょうが、仕事には年齢制限もありますから、若いときのほうが選択肢が多いのも事実です。特に女の子の場合は出産の可能性もあるので、準備は早いに越したことはないと思います。 早めにゴールに向かってスタートをきれば、予定変更の時間も生まれます。途中で方向転換したとしてもそこまでの積み重ねは0にはなりません。早めのゴール設定は、自分の可能性を広げることにつながると思います。 記: しかし、一つにしぼることができない生徒も多いのではないでしょうか。 漆さん: しぼれなくてもいいと思います。今の勉強と、自分の未来や社会がどうつながっているのか、まず将来を意識することが大切です。 自分という人間は、どういうことだったら好きでずっと飽きないでできるのか。それができる仕事というのは、世の中に何があるのか。情報を得て、考えて、その上で、「今は決まらないけど、こっちのほうが好きそうだから、こっちに行っておこうかな」「今は決めないでとりあえず保留しておこう」でもいいと思います。知った上でその時点では進路を一つにしぼらないことも選択だと思うのです。 ただ、情報がなく考えてもみなかったとなると、将来、「あの時誰かが教えてくれていれば、こんな選択しなかったのに」となってしまうかもしれません。わたしは卒業生にそういう後悔だけはさせたくないですね。 記: それでは、これからの品川女子学院の方向性を教えてください。 漆さん: このまま、この「28project」を大切に続けていきたいと思っています。28才のホームカミングデーを開き始めて、卒業生が生き生きと生活している姿を見て、ようやく成果が上がってきたと感じていますので。 ホームカミングデーは学校が卒業生を呼ぶのですが、去年から成人式の日に、「学校で成人式やろう」と、卒業生が自分たちで企画して学校でパーティーをやっています。卒業後、引っ越したり留学をしたりする子もいるので、遠くからも集まってきますよ。「どこから来たの?」と聞いたら、「ベネチア(注1)の留学先から来ました」と答える子もいました。そういう卒業生を見ていると、やはりわたしたちのやってきたことは間違いではなかったと感じるのです。 もともと本校が83年前にスタートしたときの創立の精神は、「社会でも活躍する女性を育てる」というものです。社会で活躍する女性像は時代で変化しますが、その精神を大切にしていきたいと思っています。価値観が途中で変わってしまったら、2万人の卒業生をがっかりさせてしまいます。その時その時表現の仕方は違うけれど、今後も本校の創立の精神を貫きたいと思います。 (注1)ベネチア…イタリア北東部の港湾都市 |