インターネットのお仕事人辞典 トップページ > インターネットのお仕事人辞典(R) > ナビゲーター:池本修悟さん[NPO代表] > インタビュー
3.自分のスローの原点

 

記: 池本さんは小さい頃、どのようなお子さんだったのですか?

池本さん: 子ども時代は、ほんとにサッカーが大好きだったので、サッカー少年だったと思います。高校ぐらいまでサッカーばかりしていて、他のことには別に興味がなかったですね。高校でサッカーを辞めたときから、第二の人生になったと思っています。そこで自分は一回死んだと思っていて、人生が全く変わりましたね。

記: 大学時代は、ボランティア活動をされていたと調べてきたのですが、高校でサッカーを辞めたことがきっかけだったりするんですか?

池本さん: 高校時代は、ボランティア活動はしていなかったし、むしろ興味がなかったです。高校三年ぐらいの時に、うちの高校出身の先輩が、たまたま講演に来たことが大きかったと思います。その先輩は、『世界の高齢者福祉福祉』と『日本の高齢者福祉』という本を岩波新書から出しているんですね。講演を聞いた僕は、「こういう活動をしている人もいるんだ」と思い、また「日本の高齢化社会って、今後大変なんだ」ということを知って、「なんとかしなきゃいけないんだ」と思ったんです。そして大学に入ってからその本を実際に読んでみて、僕は単純だったこともあって、これは大変だと思ってしまったんですね。僕は高校時代、サッカーと受験勉強しかしていなくて、それが終わって、ふと読んだ本だったからすごく影響されてしまい、これからは福祉の時代だと思ったわけですよ。

記: 本を読んだことがきっかけで、福祉のボランティアをはじめることになったんですか?

池本さん: そうですね。僕が入った大学は慶應大学のSFCというところで、インターネットのことや、情報社会をいかに作っていくのかということを考える学校だったんです。だから、はじめは、情報化社会と高齢化社会を組み合わせたようなことをしたかったんです。というのも、僕は、高齢“化”社会が高齢社会になっているという問題と、情報“化”社会が情報社会になっているという問題がシンクロしていると考えました。そこで、その二つを組み合わせたようなことがやりたいと思ったので、まず初めに、高齢社会と情報社会を扱う活動をしている人をインターネットで探しました。そうしたら、高齢者や障害者の施設にインターネットを導入しているプロジェクトをしている人が、僕の大学のキャンパスにたまたまいたんです。だから、「手伝わせてください」というメールをその人に打って、手伝わせてもらうことになったんです。

記: 実際には、どんなことをしていたのですか?

池本さん: その頃の僕は、インターネットとか全然わからなかったし、大学一年生だったので、とりあえず、物を運んだり、おじいさんたちの将棋の相手をしたりなど、デイ・サービス(注2)というのをやっていました。そういうことをしているうちに、ボランティア活動にはまっていったんです。その先輩が卒業してからは、インターネットのことはしなくなって、“湘南ゆうき村”という、デイ・サービスと知的障害者施設の二つが複合化された施設に毎週のように行って、ボランティア活動を続けました。

記: 大学時代にボランティアサークルを作られていますが、どういう経緯からですか?

池本さん: ボランティアをもっとたくさんの人に経験して欲しかったんです。SFCは田舎にあるのですが、みんなサークル、授業、バイト、遊びでせかせかしているんです。だけど、僕がボランティア活動をしていたデイ・サービスの施設にいるときは、時間がとてもゆっくり流れるのを感じたんです。施設にいる人たちには二種類の人がいて、月・水・金が身体障害者の人たちで、火・木がおじいちゃんおばあちゃんでした。どちらにしても、その施設にいると、コミュニケーションがゆっくりで、その分会話の内容が濃くて、いろんな話を聞かせてもらえたんですね。だから、僕が何かをしてあげているというよりは、いろいろ教えてもらっていることの方が多かったです。そういうゆっくりとした濃密な時間が僕にとってとてもよかったので、いずれは社会で活躍するような人たちが、大学2年生3年生の時にそういう体験をした方がいいと思ったんです。それで、自分でボランティアサークルを作って、ボランティア活動に友達や後輩をどんどん引き入れていきました。

記: ボランティアを通して感じることが出来る生活の豊かさを学んだことは、現在につながっているんですか?

池本さん: ボランティアの経験のおかげで、周りに流されずに、自分の大切にしたいものを大事にするような生き方が出来るようになったと思います。大学で一人暮らしになると、僕も最初の頃は牛丼ばかりを食べて体を悪くしてしまったり、夜中まで遊び過ぎて留年してしまったりしました。そういう、ある種乱れた生活だった頃に、ボランティア活動を定期的に始めるようになってから、自分の中でバランスを保つことが出来るようになったのがよかったと思います。週一回でもいいから、施設などに行って、スローな時間を過ごし、無理せずゆっくり過ごすことの大切さをちゃんと体験することで、周りの速い流れに流されないでがんばってやっていけるということを実感したんです。例えば、今だって、僕も普通に就職して、ある種、無理をする速い流れの中で働いてやっていくというのも出来ないことではないと思うんです。でも、あえてそうせずに、自分らしさとか、自分の大切にしたいものを大切に出来るような生き方をしたいし、そういう環境を自分で守りたいと思うようになったんです。

注2: デイサービスゥA施設に行き、各種サービスを受け、夕方自宅へ帰っていく「日帰り介護」を行うこと。

 
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