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2.あなたの「生きる目的」はなんですか?

 

葛原さん: 俺から君たちに聞きたいことがあるんだよ。あんまり悩まなくてもいいんだが、君たちの「生きる目的」は何かな?

記(同行): 私自身よく分からないので、抽象的になってしまいますが、現時点では楽しく生きたいということです。瞬間的に終わってしまう楽しさではなく、自分にとって楽しいと思う事を続けていき何か目標を達成した時の充実感を得るとかだと思います。

記: 僕も幸せになりたいというのがあります。具体的に言うと難しいですが、楽しく生きたい、仕事をするにしても好きなことをしていたいと思っています。

葛原さん: うん、それも分かる。それで俺が思う「生きる目的」の大きな部分は、「人間らしい心」を成長させ続けていけるようになることだな。でも、確かに幸せになることも「生きる目的」の一つではあるな。どんな人だって幸せになりたいと思っているが、幸せにもいろいろ段階があるんだ。俺も含めて人間の場合は、生まれてからしばらくは受身でいることになる。親にミルクを飲ませてもらったりお風呂に入れてもらったりと「してもらう」ことで幸せを感じたり満足するんだな。まず人から「してもらう」ことから始まって、徐々に立てる‐歩ける‐走れるといったように人の手を借りずとも自分が「できる」ことで幸せを感じるようになってゆく。それじゃあ、次の幸せは何だと思うかな?

記: う~ん、なんでしょう?分かりません。

葛原さん: それは自分が人に「してあげる」ことだな。例えば母親になると子どものために一生懸命になって世話をする。つまり自分が「できる」ことを自分以外の人や動植物に「してあげる」ということだな。幸せには、今言ったような段階があるんだ。でも今、恐ろしいと思うのは、幸せの段階が分からなくて「人のものを盗る」ことも幸せと勘違いしている人が多くなっていることだ。昔は人間として盗るという幸せ観はほとんど無かった。それは盗ることが悪いことだとはっきり教えられていたからだと思う。しかし、今は叱られたり怒られたりすることが少なくなってきたので、人間としてあってはならんことまで幸せだと思いこんでしまう、そういう世の中になってきているのではないだろうか。それでは生きる目的も分からなくなるわけだ。その幸せの段階を成長させていくことも「生きる目的」の一つだと思うな。

記: 幸せの段階というのはどの様にステップアップしていくのですか?

葛原さん: 人間関係が重要になるんだと思う。俺が子どもの時は家族や友達以外にも地域の人間関係が濃かったもので、老若男女いろいろな人と深く接しているうちに「してあげる」ことも幸せだということが薄々分かってきた。

しかし今は世代が違う人同士で関わらんから、そういうことができんというか、理解できるようになる環境が整ってないんだと思う。人に「してあげる」ことが楽しいと思えるのは、心がその境地や段階にならないと分からない。人に「してもらう」段階では人に「してあげる」ことが幸せだとはとても思えないわけで、それで人の「ものを盗る」ことさえ幸せだと思えてしまう。今は間違ったことを幸せと勘違いする人がいるように本当の幸せが分かりにくい時代だな。

記: 僕もそう思います。それに都会になればなるほど近所や地域での繋がりは薄れているように感じます。

葛原さん: そして幸せになるということ以外に、俺が考える「生きる目的」についての話をしようかな。人間には動物のように体を生かし続けようとする「本能」と動物には無い  「心」がある。そして、その2つが一緒になって自我になる。それは自分中心で、自分の得になることを中心に考える心だな。一方、誰の中にも神性とか仏性という心、他の為に命さえかけるような心、学ばなくても絶対的な正しさが分かるような心が潜在的にあるんだ。人生の目的は、その後者の心を目覚めさせることでもあると思う。

その心が目覚めている人の有名な話として第2次世界大戦中、ドイツのヒットラーの命令でドイツ軍や国民がユダヤ人大虐殺をした。それで多くのユダヤの人々の命が奪われていった。その中で、ユダヤ人を匿ったり、逃がしたりしたのが発覚すると自分も命の危険にさらされると分かっていても、ユダヤ人を助けた人もいたわけ。その中には日本人の外交官だった人もいたそうだ。彼らは、絶対的な正しさが分かっている本当の自分に目覚めていて、周囲の常識に流されることがなかったのだと思う。ガンジーやマザーテレサもいい例だな。

記: 「シンドラーのリスト」(注)という映画や伝記にもなっていますね。

葛原さん: そういう例でも分かるように、本当の自分に目覚めた人達は世の中の間違った常識、偏った考え方に流されることなく、間違ったことに対して「それは違う!」とはっきり言えたり行動ができるんだ。今の日本はそれができる人があまりいないのではないかと思う。ある宗教団体がいい例で、高学歴の人達にも関わらず、教祖から「人を殺しなさい」と言われれば、人を殺してしまうこともあるというかなり危険な状態になっていると思う。暗示にすぐかかったりして本当の自分が全く分からなくなっているということだな。

記: 葛原さんは本当の自分に目覚めるためには何が必要だと思いますか?

葛原さん: 家庭や学校での心の教育だな。俺も小学校へ指導に行き、中学校は総合学習、高校では工芸の授業を通して心の教育をしているつもりだ。だけど俺の知っている限りでは、他の授業で心に関する勉強はゼロ、全く行われていない。学校でも心の教育をしていく必要があるんだが、親も先生も世の中も心のことは全く分かっていないので、一言でこうすれば良いというほど簡単な問題ではないから、学校でも取り組めんのだと思うな。

記: それではどこから心の教育に取り組み始めればいいのでしょうか?

葛原さん: まずは本当の自分(心)に目覚めた人達が自分の周囲から心の教育を始めるしかないだろうな。できれば子どもを持つ親から始めて世の中へ広まるといいな。親が自分の心を知り、従来の知識を詰め込む教育ではなく、心の教育だとか、知識を使う方法を学ぶという知恵の教育をしていければ良いと思うな。今は知恵の教育が足りないし、心の教育についても今までモデルも何も無かったから、どうしたらいいか分からない状態だろうと思う。だから、今から心の教育を始めるといっても本当に大変なことだと思うな。だがそれをしないままでは日本の未来が危なくなってしまう。日本だけでなく世界中がちょっとおかしくなってきている。

(注)神性・・・神の性質。こころ。精神。

(注)仏性・・・すべての生き物が生まれながらにもっている、仏としての本性。仏となることのできる性質。

(注)シンドラーのリスト・・・アメリカで制作され、1994年2月に初公開された。監督はスティーヴン・スピルバーグ。作品・監督・脚色・撮影・編集など数々のアカデミー賞を受賞した作品。

 
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