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記者(以下、記): 現在のお仕事内容はどのようなものなのでしょうか? 三井さん: 僕がやっていることを理解していただくには、『たびそら』を見てもらうのが一番いいと思います。主にこれまで、『たびそら』という自分のHPの中で、写真と文章を使ってアジアでの旅を表現してきました。今回、写真集を出して写真展をやって、ようやくフォトグラファーとしての一歩を踏み出したというところです。キャリアという意味では始まったばかりですね。僕もまだ目標を追っている途中なんです。写真を撮って文章を書く、というのは誰でもできることです。今はHPでも、旅行記を載せているサイトは山ほどあります。ユーラシア一周なんて目新しい時代ではありません。世界一周とか、僕の旅より断然すごい旅をしている人もたくさんいる。そんな中でそれを職業としていくには、どうやって表現していくのか。それが肝要だと思います。僕自身も道の途中で、その方法を模索している段階ですね。
記: フリーライター・フォトグラファーというお仕事は収入が不安定だと思うのですが、三井さんは、“生活を支える仕事”と、“自分のやりたい仕事”、というものをどのように捉えていますか? 三井さん: その二つが合致するのが、一番好ましいと思います。僕は一応フリーライター・フォトグラファーという肩書きは持っていますが、それで十分に飯が食えているかというと、そうではありません。僕の今の比重は圧倒的に後者。自分のやりたいことをする方に重きを置いていて、実際のお金はあまり入ってきません。ではそれで、お金がなくなったらどうするつもりなのか、と疑問に思われるかもしれませんね。ですが、先のことは、考えていません。そのときはそのときで何とかなるだろう、と思っています。先のことを考えていたら、こんなふうにはできませんからね。ただ、いろんな人が僕という人間を知ってくれて、『たびそら』というものを見てくれて、作品に興味持ってくれて。そういうことをつなげていけば、何とか収入もついてくるのでは、と思っています。 ただ、お金は大事です。生活していく上で、必ず必要なものですから。ただ表現するだけなら誰にでもできます。僕が考えなくてはいけないのは、それをどうやってお金としていくか。いくら作品をすばらしいと言われても、1600円の本を買ってもらわないと結局どうしようもありません。収入にならないわけですから。それなら、どうやって何千人という人に買ってもらうか。その大変さは、ものすごくよくわかります。でも、それは自分の力だけではどうにもならないことでもあります。出版社や宣伝の力も必要でしょう。写真をHPで発表する、というところまでは自分の力ですが、その先は他の人と関わっていかなければいけない部分だと思います。 記: 写真集が発売されるまでは、文章を書いたり写真を撮ったりしていたのですか? 三井さん: そうですね。アルバイトという形で、京都の情報誌のライターをやったり写真を撮ったりもしています。半農半漁という言葉があるけども、旅から帰ってきて2年、半分仕事をやって半分仕事をしてない、という状態でした。 記: 旅に出る以前はお勤めをなさっていたそうですね。具体的には何をされていたのですか? 三井さん: 印刷機械を作っていました。典型的な機械工学や、設計開発の仕事です。僕は昔から、ラジオを作ったり時計を分解したりすることが好きでした。メカへの憧れや、ものづくりへの憧れがずっとあったんです。それで、メーカーでエンジニアとしてやっていけたらいいなと思って、勤めていた会社に就職しました。 記: 旅をしようと思って前のお勤めを辞めたのですか? 三井さん: いえ、旅がしたくて辞めたわけではないんです。「この仕事は向いてない」「これはちょっと違うのではないかな」という気持ちからでした。辞めたとき、旅はともかく、物を書いたり表現したりする仕事をしたいとは思っていたけれど、その具体的な方法も全然わからない。だから、当てもなく辞めたというのが正直なところです。長旅をする人は皆、旅をしたいから、世界を一周したいから仕事を辞めるらしいですが、僕はそんなことはまったく考えていませんでした。2000年の12月に旅に出たのですが、それまではパスポートすら持っていませんでした。 記: では、旅に出ようと思ったきっかけは何だったのですか? 三井さん: それは旅行記でも書いているのですが、あのー…ふと。僕は、何かに衝撃を受けて旅に出よう、というタイプの人間ではないんでしょうね。ある夏の日に、ウォークマンを聞きながら鴨川を自転車で走っていました。「あー気持ちいいなー」と。そのときふと、旅に出ようかなと思ったんです。 そう思うに至るまでには、映画や写真など、いろいろなものの影響があったと思います。そういうものに影響されながら、お風呂に水がたまるように何ヶ月何年とかけて少しずつ、旅に出ようという思いがたまっていったんだと思います。でも、水があふれるのは一瞬でしょう?機が熟すと言いますか。少しずつたまっていった水があふれたとき、「旅に出よう」という思いが意識されたのだと思います。 記: 三井さんにとって、旅の魅力とはなんでしょうか? 三井さん: 自由であること、ですね。僕は最初、アジアからヨーロッパの端まで東から西へ横断する、いわゆるアジア横断ルートを行こうと思っていました。ですが、途中でルートを変えて、結局ユーラシアを一周することになりました。それこそヨーロッパでは西に行くのか東に戻るのか、まで自分で決めたわけです。旅は、右に行くも左に行くも自由。そういうことって日常生活ではないでしょう?日常生活で、右行くのか左行くのかいちいち決めていたら大変ですからね。けれど旅では、自分が明日東に行きたいと思ったら東に行ける。全部自分で決めなくてはいけないし、好きなようにできる。本当の意味での自由さが魅力ですね。 |