|
記者(以下、記): まず始めに“きょうと学生ボランティアセンター”を設立した際のきっかけを教えていただけますか?
赤澤さん: はい。大学4年生のとき、福祉サービスを行っている団体の方から「若い人のボランティアを探している」という声がたまたま僕に寄せられたのですが、それがきっかけになります。前年には、阪神・淡路大震災があり、多くの学生が被災地へボランティア活動に参加していました。ですから、「機会があればボランティア活動に参加したい」「情報がほしい」という学生が多かったのです。だけどボランティアの募集の案内は、大抵大学生のあまり行かない場所に張ってあったり、大学生の全く見ることのない市の広報に載っていました。地域の情報が、大学生の手の届くところになかったのです。 僕は当時、大学生協の学生委員会というところで活動していて、学生に対して色々なサービスを提供している立場でしたので、「学生に近い場所で地域のボランティア募集を発信していけば参加者も増えるのではないか」と思いました。それで何人かの友人と、「やってみたら面白いかもしれない」と話し合い、96年4月から半年かけて大学の近所で学生ボランティアを必要としているところはないかと調べ始めたのです。最初は本当に少数でしたが、こうして学生を紹介するためのセンターを設立しました。 記: 設立後は順調に進みましたか? 赤澤さん: まず、センターは大学の外に設立しました。京都は地域に大学がたくさんあるので、大学の枠組みを省いた方が良いと思ったからです。活動を通じて他の大学の人と友達にもなれることも良いのではないかと思いました。受け入れる地域の人にしてみても、別にどこの大学の学生でもかまわない訳です。場所は、京都生協が介護用品のお店を持っていて、そこの方の協力で店の一角を貸してもらえました。 当初は、サークル活動のような感じでした。だから引継ぎを考えていたのですが、思った以上に学生が来てくれて…。震災があって1年後ということと、また97年の1月には日本海で重油災害事故もありましたから、当時の活動希望者はとても多かったです。新聞などで取材されることや、友達の紹介でやってくる人も徐々に増えていきました。僕としては始まってからニーズがあったので、「これはちゃんとやらなきゃまずいな」と思いました。簡単に活動を辞めるわけにもいかなくなり、僕は大学院に入りました(笑)。 記: 辞めるわけにもいかなくなったことが、大学院に入った理由だったのですか? 赤澤さん: 就職活動はやろうと思っていたのですが、就職してから団体を設立するというのはタイミングが遅いかもしれないと思いましたし、何より「今ここでやりたい」と思っていました。自分にとっては、就職活動よりも学生ボランティアセンターで、自分の思いや関心を形にする方が後々の力になるのではないかと思っていました。そして、現場で活動して見えてきたことをより深く勉強したいとも思いました。 大学院時代は、大学よりも授業が少なかったのでほとんどセンターにいました。僕の仕事は、ボランティアのスタッフとして色々な施設や団体の方から「ボランティアを募集したい」との要請を受けたり、あるいは学生で「活動したい」という人に、情報提供やセミナーを提供することでした。そのうちに活動がとても忙しくなり、「学生のスタッフだけでは無理だろう」という話になりました。そこで僕は大学院を卒業して、そのままセンターで働く形になったのです。
記: 就職活動をする周囲の様子を見て、焦ることや迷いを感じることはありませんでしたか? 赤澤さん: 僕は大学の時に授業をさぼって大学内でのいろんな活動やボランティアセンターの運営に時間を費やしていましたから、今まで他の学生と違うことをやってきたのに同じように就職活動をする方が不自然だと思いました。 また、自分が「絶対にこれがやりたい」という職業を発見できなかったことと、「その仕事をすごくやりたいって人がいるなら、自分がその職業に就かなくてもいいよな」と思ったというのもあります(笑)。 大学生活では、入った当初には思ってもいなかった色々な体験をしましたし、その中で能力も見についただろうと振り返っていました。だから、自分自身が大事に思うことを否定して、なおかつやりたいのかわからないことのために、志望理由を書くことが出来なかったのです。就職活動をしている人を見ても、全く焦ることはありませんでした。また、そのころボランティアセンターの仕事を通じて、働いている色々な大人に出会っていました。中には、自分の納得する仕事を求めて転職している方もいました。そういう方たちの姿を見ると、新卒ですべての学生が就職することの方が、「何か違う」と思ったのです。人生まだ長いのだから、僕はたった今大事にしていることをやりたい。飛ぶ前に、もう少し助走したいと思いました。 |