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記: 岩舘さんは漆の原点を探すために世界中の国に行った事があるとのことですが、その時のお話を聞かせてください。 岩舘さん: 私が中心となってやったわけではありません。大学の先生で漆の原点について研究しており、その先生と一緒に色々な国に行ったのです。ベトナム、ブータン、ミャンマー、中国、それからチベットにも行きました。チベットは空気が薄くて、さすがの私も参ってしまいました。現地の人の話だと、チベットにも漆の木はあるとの事でしたが、未舗装道路の移動が大変だったので、木を見に行くことはできませんでした。チベットは草ばっかり生えていて、なんにも無い所だから行っても面白くないと思いましたね。あの国には、行く気にはなりませんよ(笑)。漆の原点はベトナムを流れるメコン川の上流にあり、それが日本にも伝わってきたと考えられていますが、私は日本にある漆はもともとそこに自生していたのだと思います。漆は縄文時代には接着剤として使われていて、漆を使った製品が各地の遺跡からも出土しているのが何よりの証拠です。
記: 今、国内の漆を取り巻く環境は大変厳しいと思うのですが、その事についてはどのように考えていらっしゃいますか。 岩舘さん: 以前は漆塗りをやる人が漆も掻き、農業をやりながら家内工業的に漆器を作っていました。ところがその後、大きな工場で機械を使って漆器を作るようになり、昔ながらの漆器作り形態はなくなってしまいました。それは時代の流れで仕方のないことですが、最近は、漆器が売れないため辞める職人も増え、どこの産地も苦しい状況だと思います。しかし、若い人たちには分からないと思いますが、景気の良し悪しというのはいつの時代も繰り返すものなんです。だから良い時を逃さないように頑張ればいいと思いますね。 記: 漆掻き職人という仕事に何か思い入れはありますか。 岩舘さん: いや、特にありませんが、漆を掻いている夢を見ることはよくありますよ。今は亡き仲間と一緒に漆を掻いている夢です。それだけ体に染み付いているという事なのでしょうか。毎日毎日やってきましたから、生活の一部、それも重要な部分になっているのです。 記: 漆掻きの技術や漆器は今後も残っていって欲しいですか。 岩館さん: 漆は何千年、何万年と残ってきているので、今でもあちこちから古代の漆器が発掘されています。だから、私が残って欲しいと思う思わないというような話ではなくて、そんな事に関係なく漆は必ず残っていくと思っています。
記: 最後に青少年に対するメッセージをお願いします。 岩舘さん: 私は漆掻き一筋で生きてきましたから、これからの若い人達にも何かひとつの事をやり通して欲しいと望みます。ひとつの事をやり通すほうが成功できる確率も高いからです。成功というのは、お金がどうこうではなくて、心が充実するという意味です。 記: 岩舘さんはどんな時に心の充実を感じますか。 岩舘さん: 80年も生きてきましたから、すぐには思い浮かばないのですが、例をあげると、自分が掻いた漆液を使った、漆器の傑作ができることを想像したときなど、なんとも言えない充実感を覚えますね。各地の遺跡からは6000年ほど昔に作られた漆器が出土しています。自分が掻いた漆液がモノとなり、ずっと残っていく事は最大の魅力ですね。 記: 本日は貴重なお話をありがとうございました。 |