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2.子どもの頃から、なんといってもやりたかった調理

 

記: もんじゃ屋さんを始める前は、どのようなお仕事をされていたんですか。

荒木さん: 調理師です。昭和26年から、秋葉原デパートで調理をやっていました。

でも、本当は船に乗りたかったんです。そして、船のコックになりたかったんです。

記: なぜ、船のコックだったんですか。

荒木さん: 調理と船が好きだったからです。この辺には隅田川があるのですが、当時は勝どき橋がなかったので、銀座に行くには2銭の渡し船を使っていたんです。自転車を乗せると、1銭高くなって3銭だったかと思います。

記: 銀座へはよく遊びに行っていたんですか。

荒木さん: 私は高校へは行かずに、中学校までしか行っていません。お金もなかったので、「働け!」と言われていました。そこで、1ヶ月1500円で朝夕刊の新聞配達をしていました。そしてお小遣いをもらうと、銀座あたりに遊びに行っていました。遊びに行くのは銀座しかなかったんです。高い安いは別問題として、飲みに行くにも、銀座、新橋あたりしかなかったんですね。

記: それでは、なぜ調理をしたかったのですか。

荒木さん: 小学生の頃から伯父さんや叔母さんが来たときに、料理を作って食べてもらうことが好きだったんです。自分でお米を研いで、その頃はガスがなかったのでマキを使って釜戸でご飯を炊いていたんです。親戚は、伯父さんや叔母さんが5、6人しかいないのですが、やはりお正月になると親父を頼って家へ遊びに来るんです。

昭和16年、私が小学校5年生の時に終戦を迎えたのですが、その当時は国民学校に通っていました。小学校4年生の頃から、お米を研いだり魚を焼いたりして、料理を作っていました。そして伯父さんや叔母さんに、「絶対に大きくなったら調理師になるんだ。」と言っていました。「お前の作ったモンなんか、食うヤツはいないよ。」なんて言われていましたがね。(笑)

今の素材の作り方が簡単だということではないのですが、化学調味料が増えたために、味というのはある程度なら簡単に調えられるようになりました。しかしその当時は、味噌と醤油だけだったんです。その中で、だしになるかつお節をうまく使わなければいけないのですが、かつお節を使い過ぎるとうまく素材の味が出ないということもあるんです。いろんなことをやって、試行錯誤をして自分で味を作るんです。

記: 料理は誰かに教わったりはしなかったんですか。

荒木さん: その当時、今TVでいっぱいやっているような料理番組もありませんでした。私の友だちで、帝国ホテルのコックの大谷さんという方がいるのですが、その方の下でお世話になりました。その時はちょうど、遊船の方も試験に合格していたんです。採用通知も届いたのですが、親父は「馬鹿やろう!!船なんか乗ってるんじゃ駄目だ。おまえは長男だから、跡取りなのに船に乗るなんてとんでもない。」と言ったんです。そうでなければ、船のコックさんになっていたんですけどね。

記: やはり、その時は辛かったですか。

荒木さん: はい、辛かったですね。しかし、親2人と兄弟5人の家族だったのですが、上の2人が姉さんなんです。そしてその頃は、女子の職場というのはとても限られていました。職場といっても、お茶汲みくらいしかありませんでした。

記: ご両親はなぜ、船乗りのお仕事に反対をされたのですか。例えば給料の問題ですか。

荒木さん: いや、給料そのものが問題ではなかったのです。側にいて欲しいということだったんです。親が、「家の外へ出て行っては困る」と言っていたんです。困ると言われても、希望はやっぱり希望なんです。ですから、自分のやりたいことを親に駄目と言われるのは、非常に自分としては辛いことでしたね。しかし、家族のためでしたからね。

そして、家族の側で新聞配達をやっていたときに、帝国ホテルの大谷さんにひっぱってもらえて秋葉原デパートに勤めるようになったのです。その当時、都電が10円で、給料が2000円でした。その親方さんもものすごくいい人でした。私は子供の頃から、なんといっても料理をやりたかったんです。そして、昭和28年に調理師免許も取りました。

その試験を受けることは、親方やその当時の社長さんが「お前、試験に通って来い!資格をもってないと駄目だし、料理にも生かされる。」と言って勧めてくださいました。当時の試験は、講義を受けて、その場でマルバツで行われ、その日に結果がわかったんです。

 
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