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※この章では、半世紀以上にわたり出版されている暮しの手帖のバックナンバーを読んで印象に残ったところを中心にお聞きしました。 ※雑誌のバックナンバーを読ませていただいたところ、暮しの手帖では、「ご飯は日本人の主食」「和食が日本人に適している」などのテーマで、日本食が大事ということを一環して伝えてきていることが印象に残りました。 記: 今でこそ日本食はいいと言われていますが、高度経済成長期にはアメリカ文化の西洋の文化が入ってきて、洋食がいいとか言われていたと思います。そんな世の中の流れの中で日本食は大事と主張し続けることに迷いはありませんでしたか? 大橋さん: ないですね。そういうところは、私は流されないのです。
記: 何で流されないのでしょう? 大橋さん: 小さい頃から色々なことに出会っていたからだと思います。幼少時代の北海道での生活、父が肺結核になり、そのときにお母さんを支えなければ、という思いがありました。小さい頃に辛い経験をしてきていますから、何事にも動じなくなりました。 記: 動じないためには経験でしょうか? 大橋さん: そうです、自分がいいと思ったことを信じることです。「自分がいいと思ったこと」というのは自分が生きてきた歴史が判断するわけですので、やはり、色々なことに遭遇しなくてはだめです。すりにお金をとられてどうしょうもなくなることも一つですし、試験で50点以下をとってもそれも経験です。何でも経験することやってみることです。「やだわ、それ。あなたどうぞ」は絶対だめです。何でも人の嫌がることもしてみる。本当に毒が入っているものはだめだけれど、これ美味しそうとかまずそうだから止めておくわとか食わず嫌いもいけません。食べてみなければわからない。何でもやってみることです。経験から得たものは宝です。物事の判断力になります。経験しておかないと、もっと悪いことに繋がってしまうかもしれないけれど、色々なことを経験して失敗をして、損したな、ああ痛いとなれば2度とやらなくて済みます。 ※暮しの手帖では創刊以来、企業からの広告を掲載せず、雑誌の収入のみで成り立っていることも特徴です。 記: 暮しの手帖は広告収入のない雑誌ですよね。ものを売ろうとしていないので、他の雑誌と印象が違います。他の雑誌では、読者のために書いているのだろうけれど、物を売ろうという意図を感じてしまうのです。 大橋さん: 今の時代は贅沢になっています。お金さえ出せばなんでも買えますね。贅沢以上に贅沢なのです。雑誌というのは贅沢な面もないとみんな喜ばなくなってきています。でも精神や見せ方によると思います。文章で美しかったといっても、どんな風に美しいかが、みんなが知りたいと思うのです。「赤や黄色や青の布が風になびいている」というのと「切れがなびいている」というのは違いますよね。暮らしの手帖は、役にたとうと思っていることが本当に根本に入っています。きれいに美しく見えるというのと質実剛健というのが違うのではないでしょうか。 記: 今贅沢すぎるとおっしゃいましたが、暮しの手帖では、何かそんな世の中に対して発信していきたいことがありますか? 大橋さん: 毎日毎日の暮しというのは、そんなに変化のないものです。だから本当は、時代が変わってもあまり変化はないと思います。ただ贅沢になってきたというのは、生地が人絹だったのが絹になったとか、お米でも、前は麦も2割くらい入っていたのが入れなくなって白米になったとか、そういうことではないかしら。贅沢っていう言葉はあまり良い言葉ではないでしょうね。 ※暮しの手帖では、「商品テスト」と呼ばれるコーナーがあります。各メーカーから出されている製品の耐久度や性能、安全性などを調べるテストを行っています。 記: 商品テストがはじまったきっかけは何だったのでしょう? 大橋さん: 創業の頃にミシンを購入したことがありました。銀座の仕事場の近くに、もの凄く大きな闇市があり、素敵なミシンが売っていたのを見てきた社員から「あれを買ったらどうでしょう」と言われたのです。見に行ってみたら良さそうなものだったので、そのミシンを買って来たら動かなかったのです。私たちは驚き、自分を恥じました。きちんと調べて、購入しなくてはいけないと身に染みました。私たちは、やっと戦争が終わったばかりで生活も苦しい中で物を買うのに、読者の方にそんな思いをさせるわけにはいかない。暮しの手帖は、読者に向けて、しっかり商品を使ってみて、良いものを雑誌に発表しようじゃないかというのが始まりです。 記: 雑誌のバックナンバーの中にトースターの商品テストのために6万何千枚焼いたというものを見つけました。言葉で言うのは簡単だけれども、商品テストを今まで続けていくというのは凄く大変なことだなと思いました。
大橋さん: だってそうでしょ。人様が一生懸命に作ったものを、いいか悪いか言うのにはそれだけに使ってみたり、お金をかけてテストしてみたりしなくては嘘になってしまいます。いい加減なことではだめです。商品テストが雑誌の中で一番お金がかかっているのではないでしょうか。 ※日本料理や西洋料理など、お料理のページに毎回たくさんのページを割いていることも特徴です。実際に料理人の方をおよびして、暮しの手帖社の台所で調理をしてもらい撮影もするのだそうです。台所には、どんな料理にも対応できるように、さまざまな食器が置かれていました。 記: 暮しの手帖には、たくさんのページをとって、日本料理や西洋料理など、色々なところのお料理を載せていますよね? 大橋さん: 生活の中では、食べることが一番大切なことだと思っています。人間が生きることに一番つながっているわけです。食事は毎日3度3食べるものだから、それを粗末にしたら健康を害されるし、食べ過ぎても身体に悪いのです。そういう意味で、お料理の基本を一番大事にしています。暮しの手帖の料理のレシピを見て作ったら、とても美味しかったというのが大事だし、私が食いしん坊だからというのもあります。(笑) |