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3.芸術性を追求する

 

アニメーション演出の喜びとや苦労はどんな部分にあるのだろうか。 アニメも視聴者あってのものである。『笑い』であれ『感動』であれ、自分がアニメの中に盛り込んだ要素が視聴者に伝わったという事がわかった時に喜びを感じるのだという。

神戸さん: 「最近、泣けたとか笑えたという反応がインターネットとかで結構あるんですよ。笑わせたい話で実際に笑ってもらえたらうれしいですね」

逆にお仕事をしていてどんな面で苦労があるのか。神戸さんは演出という仕事を通してアニメの中に自分の芸術性を反映させるように意識しているのだという。芸術性とはクリエイターならば誰でも持ち合わせているものであろう。神戸さんはご自分の芸術性を“スタイリッシュ”だとおっしゃっていた。では、“スタイリッシュ”なアニメとはどんなものなのか。その説明をするのにクリムトという画家の絵をあげてくれた。このクリムトの絵が出している雰囲気こそ神戸さんのいう“スタイリッシュ”である。アニメの個々のキャラクターというよりはむしろアニメ全体を通しての雰囲気を“スタイリッシュ”にしたい。そのために毎回、試行錯誤を繰り返しているという。アニメ全体の色使いを淡くしたり、逆に濃くしたりして“スタイリッシュ”を追求したこともあるそうだ。

前置きが長くなってしまったがアニメーション演出の苦労とはそんな芸術性が純粋に反映できない点にあるのだという。

神戸さん: 「スポンサーからの厳しい要求があるんですよ。今やっている『ベイブレード』だとアニメに出てくるコマが商品そのものじゃないですか。だから、それを見せなければならないんです。前にやっていた『コメットさん』だとコメットさんというキャラクター自体が商品になっているので『下品な事させるな』とか『可愛くしてくれ』とかそのような要求があります」

アニメとはそれ自体が、中に出てくる商品のCMになっていることもある。 現在、小学生の間でコマがブームになっている。それは神戸さんが担当している『ベイブレード』の影響があるのではないか。『ベイブレード』は主人公がコマを使って敵と戦っていくというストーリーである。このアニメが火付け役となってコマブームを作っている。 スポンサーから見ればアニメの影響力を使ってコマを売るという戦略は成功なのかもしれない。その成功の裏にはアニメの制作者がスポンサーから受ける数々の要求があるのである。そんな状況では必ずしも自分の持つ芸術性をアニメの中に反映できるとは限らないのである。

そして、もう1つ自分の持つ芸術性がアニメに反映されにくい理由があるのだという。 それはアニメ制作がチームで行われているという事である。

神戸さん: 「1本のシリーズを作ろうと思ったらとてもたくさんの人が必要になるんです。まず、監督がいて、シナリオを書く人が4,5人いて、演出家も4,5人いるんですよ。あとプロデューサーやキャラクターデザインもいて、その下に作画監督が5人はいますね。あと背景を書く美術監督がいます」

1つのアニメを制作するのには延べ100人の人が関わるのだという。そして、1人1人に細かく作業が分担されているのである。 監督になった場合は比較的自分の芸術性を反映させやすくなるのだというが、それ以外の立場であると難しくなってくるのだという。1つのアニメで4人、5人の演出家がいれば自分の芸術性だけを反映させるわけにもいかないのかもしれない。意見の衝突が起こる事もあるという。

では、自分の芸術性を反映できるような作品を作ることはできないのか。 神戸さんが今まで手掛けた作品でかなり自分の芸術性を反映する事ができた作品があるのだという。しかし、その作品はテレビアニメではなく小学校などで使われる道徳教材である。道徳教材はスポンサーが付くテレビアニメとは違い商業性が薄い。周りから色々言われる事もなく自分の思った作品を作ることができるという。もちろん道徳的なテーマは入れなければならない。

神戸さん: 「道徳教材というのは必要な事がしっかりと伝わっていれば良しという感じなんですよ。むしろ、必要な事以外の要素は入れないでくれと言われます。例えば『思いやり』というテーマであればそれだけを伝える事が目的なんです。また、道徳教材なので宗教性や暴力表現や性描写。あとは人生観などは絶対に盛り込んではいけないんです」

内容的にはそれなりの規制があるようだが、神戸さんが目指すアニメ全体を“スタイリッシュ”な雰囲気にするという点では規制が少ないのであろう。神戸さんは自分の色がだしやすい道徳教材を今まで多く手掛けてきたのだという。

 
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