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2.学生には驚きを与えなければならない  ~大学時代に得たとっても大事な考え方

 

相磯さん: 大学に行くことにはなったものの、とにかく中学・高校時代のことはほんとに何も残っていないので困りました。私は大学でも電気工学科というところにいたのですが、そこではもちろんいろんな電気の知識を勉強するんですね。中学・高校の時は基礎力が全くないので、高度な数学や物理を、どういうふうにして教えるかというと現象論的に教えるんです。そういうことが好きな人はいいんだけれども、私みたいなのには合わない。いくら現象論を教えてもらっても知識が身につかないんです。実は私は大学に行くときに電気はやめようかと思ったんです。でも他に能力がないものだから、他の学部には行く術がなくて、仕方なく大学でも電気工学科に進むことになりました。

しかし、大学に行って非常に驚いたことがありました。数学をきちんと基礎から勉強して基礎力を身につければ、高校の時によくわからず、何年もかかって学んだ知識というのが、ほんとに1週間とか2週間で分かってしまうんです。基礎をきちんと身に付けることが非常に重要だなということを私は実感しました。また、私は大学へ入ってもう一つびっくりしたことがあります。こんな世界があるのだろうかということです。中学、高校時代は下町で遊びほうけて、皆さんに言えないようなことをやっていましたから、大学に行って有名な先生の授業を受けたり、様々な話を聞くことがものすごくおもしろいんです。大学っていうのはこんなにおもしろいところかと思い、目をむいてしまいました。でも、都立の進学校からきている私の友達の中には逆に、「大学は高校の延長だ。」という人も結構いました。みんな勉強する環境に恵まれていたから、逆に大学はおもしろくなかったのでしょうね。けれども私は全然、感覚が違う。中学・高校時代ろくに勉強できない環境にいたから、大学ってこんなおもしろいところかと思えたんです。だから私は夢中になって授業を取りました。取れる授業は全部取った。ほんとに大学ってすごいと思いました。

慶應湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)を立ち上げた時に、学生には驚きを与えないとダメなんだっていうことを言っていたのは、自分自身が大学に驚きを与えられたと感じているからです。こういうところが非常に重要なところで、それがSFCの教育の原点にもなっていると思っています。それは私の体験から出てきているんですね。あの頃の私の様に、世の中のすごさみたいなものを知らない人はいっぱいいるんです。そういう人たちに、どういうふうにして世の中を理解させるか、ということが大変重要なんじゃないかと思っています。 自分のことを言うのは恥ずかしいんだけれども、大学のときには、必死になって勉強したから、卒業したときの成績は一番でした。どういうわけか(笑)。成績と実力がいかに違うかということを言いたいんだけどね。そういう意味では非常に楽しい学生生活を送ったなと思います。皆さんとは違った歩みをしたといってもいいんじゃないですかね。学生には、まず驚きを与えるというのが重要であると同時に、知る喜びを体得するということが、非常に大切なんじゃないかと私は思います。

記: 相磯先生はその頃、どのように勉強をされていたんですか?

相磯さん: 皆さんのように体系的に、組織的に勉強することはありませんでした。授業を中心に勉強しただけです。ただ今の学生と違うのは、みんなグループになってよく勉強していました。そういうのが今の学生にはないですよね。今の学生は授業に頼りすぎているんじゃないかという気がしています。授業は枠があるため限界があるのは当たり前で、大学や先生に文句を言うのではなくて、自分たちできちんと勉強すべきなんだと思います。私の頃は十人くらいのグループを作って、授業の合間に教室で数学の所定のテキストをベースに勉強しました。それから私のグループは卒業したあとも一週間に一度、みんなの家をぐるぐる回って、数学とロシア語なんかを勉強していました。だんだんみんな忙しくなって五、六年で終わってしまいましたけど、今でもそのグループでの交流は続いています。自分たちでそれなりの挑戦はしたなっという感じはします。今の学生はそういうことがない。もったいないなって思いますね。

記: グループでの勉強はその後も役立っていますか。

相磯さん: もちろん役に立っています。

 
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